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評価:
藤 たまき
大洋図書
¥ 630
(2004-12-15)
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3日と4日に拍手を下さった方、ありがとうございます。
表紙の印象で、悲恋系かもと思ってドキドキしながら読んだ。
…爽やかでした。
主人公の過去には暗いものがあるけど。
思春期あたりって、自分より年上のちょっとエキセントリックで放埓な感じの人に
惹かれたり憧れたりすることってよくありませんか?←誰に聞いてんだ
大人になって思い返してみたら、なんであんな変な人を好きだったんだろうかって
赤面苦笑だったりする。
少なくとも私にはそんな経験があったりして。
このアナトミアの主人公のエバも、十代のときに破滅型で頭のイカレてる絵の先生を
好きになって、しかも、その先生の焼身自殺を目の前で見てしまったっていうトラウマつき。
そのせいなのか、大人になっても「何であんな人を好きだったんだろう」という風には
思えず、いまだにずるずる引きずっている。
こんだけならすげー暗くてドロドロしたお話なんだけど、このお話を一転爽やかに
してくれるのが、エバの教え子のルーサ。
彼は17歳という年齢にかかわらず、非常に精神的に大人です。
情緒不安定で気分のムラの激しいエバを終始リードし、過去に負ったトラウマから
立ち直るのに手を貸してくれる。
私はこの本を読み終えたとき、爽やかに終わってホッとしたのと同時に、ルーサに
感心しきりだったよ。
昨今の日本の17歳の少年にこのポテンシャルはないね。
若干17歳にして、普通の成人男性よりガキっぽいとはいえ、25歳の男をリードする
その包容力。
いきなり襲ってきたかと思いきや(エバは襲い受け)、次の日からは完全無視、
お前が大人になるまではもうやらないと実に勝手なことを言い放つエバに対しての
やりたい盛りの少年とは思えない忍耐力。
夏休みに別荘を借り切って、掃除をこなしてご飯まで作っちまうその生活力。
エバの過去のトラウマの原因を探ろうと、日帰りでイギリスからイタリアまで
飛んじゃうその行動力。
エバさんよ、こんな将来有望な青年を絶対手放すなと私は心の中で叫んじまったよ。
アンタは確かに見目はいいかもしれんが、幼稚で気まぐれなわがままぷーなんだから。